JMO2006予選解答解説

 2006年度JMO予選の解答および簡易解説です。MATHIC会員などの手によるものなので正しい保障はありません。また、ここに載っている解答に関して我々はいっさいの責任は持たないものとします。「その答えは違うよー」などの意見ございましたら、ご連絡ください。

1

 答:792

 n=100a+10b+c(1≦a,c≦9,0≦b≦9)というかたちにnを一意的に表すことが出来る.このとき,m=100c+10b+aなので,
 n-m = (100a+10b+c) - (100c+10b+a) = 99(a-c)
 ここで,a-c≦9-1=8なので,(最大値)≦792.一方n=901のときn-m=792なので,これが答え.

2

 答:4 * 3^(1/2)

 1辺の長さをxとし,正三角形の頂点をA,B,Cとしよう.
 |△ABC| = |△ABP| + |△BCP| + |△CAP|
 ここで,
 |△ABC| = x * x * sin60° / 2 = 3^(1/2) * x^2 / 4
 また,|△ABP|,|△BCP|,|△CAP|はそれぞれ,底辺がxで高さが1,2,3の三角形のいずれかなので,
 |△ABP| + |△BCP| + |△CAP| = x/2 + 2x/2 + 3x/2 = 3x
 よって,
 3^(1/2) * x^2 / 4 = 3x ⇔ x=0 , 4 * 3^(1/2)
 明らかにx=0ではないのでx=4 * 3^(1/2)を得る.

3

 答:576通り

 1番上の行に入っている数字を左から順に(a,b,c,d)としよう.明らかにこの4つは1,2,3,4の置換である.
 1番左の列に入っている数字が上から順に(a,b,c)のとき,入れ方は次の4通りが考えられる.

 a b c d
 b d a c
 c a d b

 a b c d
 b a d c
 c d a b

 a b c d
 b c d a
 c d a b

 a b c d
 b a d c
 c d b a

 左の列が(a,c,b),(a,b,d),(a,d,b),(a,c,d),(a,d,c)の場合も,同様にして4通りずつ入れ方が存在する(条件が各列各行に対して対称なので,列や行を入れ替えても良いことに注目せよ).
 よって,1番上の行に入っている数字が(a,b,c,d)の場合には4*6=24通りの入れ方がある.このa,b,c,dの対応のさせ方は4!=24通りなので,全部で24*24=576通りの入れ方がある.

4

 答:(6,19,30)

 b+c=x^2, c+a=y^2, a+b=z^2(a,b,c,x,y,z : 正整数)としよう.この連立方程式を(a,b,c)について解くと,
 a=(y^2 + z^2 - x^2)/2
 b=(z^2 + x^2 - y^2)/2
 c=(x^2 + y^2 - z^2)/2
 となるので,x,y,zを適当に決めたとき,a,b,cが正整数であることは,以下の条件と同値.
 ・y^2 + z^2 > x^2
 ・z^2 + x^2 > y^2
 ・x^2 + y^2 > z^2
 ・x,y,zのうち奇数は0個か2個
 ここで,上3つの条件はa,b,cが正であることと同値であり,一番下の条件はa,b,cが整数になる(すなわち,(奇数)/2の形にならない)ことと同値.
 また,例えばx=yであればa=bとなってしまうので,x,y,zは互いに相異なること,さらに,a+b+c=(x^2 + y^2 + z^2)/2なので,「a+b+cが最大⇔x^2 + y^2 + z^2が最大」であることがわかる.
 さて,(x,y,z)=(7,6,5),(a,b,c)=(6,19.30)とすれば条件が成立しているので,これよりも小さいようなものが存在しないことを示そう.x>y>zとして一般性を失わない.
 zが5以上の場合,x^2 + y^2 + z^2は(x,y,z)=(7,6,5)のとき最小なので,z≦4の場合のみについて考えれば良い.

 CASE1 z=4の場合
 このとき,(x+y)(x-y) = x^2 - y^2 < 16となる.zは偶数なので,xとyの偶奇は等しい.よってx-y≧2,x+y<8を得る.(x,y)として考えられる最小の組は(5,6)なので矛盾.

 CASE2 z=3の場合
 同様に,x+y ≦ (x+y)(x-y) = x^2 - y^2 < 9となる.(x,y)として考えられる最小の組は(4,5)なので矛盾.

 CASE3 z=2の場合
 同様に,2(x+y) ≦ (x+y)(x-y) = x^2 - y^2 <4となる.(x,y)として考えられる最小の組は(3,4)なので矛盾.

 CASE4 z=1の場合
 同様に,x+y ≦ (x+y)(x-y) = x^2 - y^2 < 1となる.(x,y)として考えられる最小の組は(2,3)なので矛盾.

 これにより,最小の組が(x,y,z)=(7,6,5),(a,b,c)=(6,19.30)であることが示された.

5

 答:(x,y,z)=(1,2,3)

 条件の3つの式を足すと,
 x^2 + y^2 + z^2 - 2x - 4y - 6z = -14 ⇔ (x-1)^2 + (y-2)^2 + (z-3)^2 = 0
 ここで,(x-1)^2, (y-2)^2, (z-3)^2 ≧ 0であるので,それぞれの不等式は等号が成立している.このとき,x=1, y=2, z=3.

6

 答:322通り

 以下,赤く塗られたマス目を■,青く塗られたマス目を□,どちらか解らないマス目を?とする.
 赤と青の2*2の正方形が両方とも出来ることはありえない.
 赤の2*2の正方形が出来るパターンが何通りあるかを考えると,

 CASE1 2*2の正方形が1つ出来る
 ■■?
 ■■?
 ???
 という風になっているとしてよい.このとき,残り5マスのうち赤マスが0個の場合は1通り,1個の場合は5通りすべてがOK.
 赤マスが2個の場合,
 ■■■
 ■■□
 ???
 は3通りともOK,
 ■■□
 ■■■
 ???
 は3通りともOK,
 ■■□
 ■■□
 ???
 は1通りのみ(両端が赤).
 赤マスが3個の場合,
 ■■■
 ■■□
 ■□■

 ■■■
 ■■□
 □■■

 ■■□
 ■■■
 ■□■

 の3通り.
 赤マスが4つの場合,5つの場合はいずれもどこかにもう1つ2*2の正方形が出来る.
 よって,1+5+3+3+1+3=17通り.残り3通りについても対称なので,17*4=68通り.

 CASE2 2*2の正方形が2つ出来る
 ■■■
 ■■■
 ???
 の場合,1番下の行として考えられるのは□□□,■□□,□■□,□□■,■□■の5通り.
 ■■?
 ■■■
 ?■■
 の場合,残り2つのマスはどちらも青.
 2*2の正方形が2つあるとき,前者のパターンは合わせて4種類,後者のパターンは合わせて2種類あるので,あわせて5*4+1*2=22通り.

 CASE3 2*2の正方形が3つ出来る
 ■■■
 ■■■
 ■■□
 と,それを回転させたもの.あわせて4通り.

 CASE4 2*2の正方形が4つ出来る
 ■■■
 ■■■
 ■■■
 のみ.1通り.

 よって,赤マスの2*2の正方形が出来るような塗り方は,68+22+4+1=95通り.
 同様に,青マスの2*2の正方形が出来るような塗り方は95通り.
 よって,2*2の正方形が出来ないような塗り方は,2^9 - 95*2 = 322通り.

7

 答:7個

 x=10a+b, y=10b+c, z=10c+a(1≦a,b,c≦9)としよう.例えばx=yであればa=b,b=cとなるので,x,y,zが相異なるためにはa=b=cとはならないことが必要十分.
 x,y,zで割れる数は,100x-10y+z = 1001aでも割れる.同様にして,x,y,zの最大公約数は1001a, 1001b, 1001cの約数となる.
 x,y,zの最大公約数が11の倍数であるとするとa=b=cになるので,x,y,zの最大公約数は91a, 91b, 91cの約数となる.よって,91*GCD(a,b,c)の約数となる(ここでGCD(a,b,c)はa,b,cの最大公約数).
 GCD(a,b,c)≧5とすると,1≦a,b,c≦9よりa=b=cとなってしまう.よって,GCD(a,b,c)=1,2,3,4のいずれか.すなわち,x,y,zの最大公約数は91*3=273,91*4=364のいずれかの約数.
 273の約数は,1,3,7,13,21,39,91,273の8個であり,364の約数は,1,2,4,7,13,14,26,28,52,91,182,364の12個である.GCD(x,y,z)は明らかに1桁か2桁であり,またGCD(x,y,z)が34以上のとき,x,y,zのうち2つが同じになってしまうので,この中から33以下のもののみを取り出して,それぞれ対応するx,y,zがあるかを調べれば良い.
 そのような数は1,2,3,4,7,13,14,21,26,28の10個である.
 x=11, y=12, z=21のときGCD(x,y,z)=1
 x=22, y=24, z=42のときGCD(x,y,z)=2
 x=33, y=36, z=63のときGCD(x,y,z)=3
 x=44, y=48, z=84のときGCD(x,y,z)=4
 x=14, y=42, z=21のときGCD(x,y,z)=7
 x=13, y=39, z=91のときGCD(x,y,z)=13
 x=28, y=84, z=42のときGCD(x,y,z)=14
 となる.のこりの3つについて見てみると,
 GCD(x,y,z)=21のとき,x,y,zは21,42,63,84のいずれか.明らかに条件をみたすx,y,zは存在しない.
 GCD(x,y,z)=26のとき,x,y,zは26,52,78のいずれか.明らかに条件をみたすx,y,zは存在しない.
 GCD(x,y,z)=28のとき,x,y,zは28,56,84のいずれか.明らかに条件をみたすx,y,zは存在しない.
 以上より,条件を満たす値は1,2,3,4,7,13,14の7個.

8

 答:14日

 1章から9章が4ページ,10章が84ページのとき,A君とB君は14日差になる.よって,これよりも差が短くなることが無いことを示せば良い.
 各章のページ数を6で割った余りは,全部5だったとしてもあわせて50であり,11 < (120-50)/6 = 35/3 < 12なので,「A君,B君とも途中で章が終ることなく読むことが出来る連続した6ページのかたまり(以下これを「かたまり」と呼ぶ)」は12個以上ある.このかたまりが1つにつき,A君とB君の読み終る日数は1日ずれる.
 かたまりが13個以下のとき,各章のページ数を6で割った余りは42.よってページ数が6で割って5であるような章が2つ以上ある.
 このような章ではさらに2日分ずれるので,少なくとも12+2=14日ずれることになる.
 かたまりが14個以上のとき,明らかに14日以上ずれることになる.これより示された.

9

 答:7 / 3^(1/2)

 求める半径をrとする.
 正弦定理より,2r = AO / sin∠ABO = AO / sin∠ACOとなる.よってsin∠ABO=sin∠ACOとなるが,∠ABO+∠ACO<180°なので∠ABO=∠ACO.同様にして,∠BCO=∠BAO,∠CAO=∠CBO.
 AOとBCの交わる点をP,BOとCAの交わる点をQ,COとABの交わる点をRとする.このとき,∠ABP+∠BAP=∠ABO+∠ABO+∠CBO=180°/2=90°なので,∠APBは直角.残り2つについても同様にして,Oは垂心であることがわかる.
 余弦定理より,cos∠ABC = (5^2 + 8^2 - 7^2) / (2 * 5 * 8) = 1/2,よって∠ABC=60°となり,∠AOC=∠POR=360°-90°-90°-60°=120°.よって,
 2r = AC / sin∠AOC = 7/sin120° = 14 / 3^(1/2),すなわちr=7 / 3^(1/2).

10

 答:60通り

 正12面体の辺の繋がり方をトポロジカルに変形すると,下の図のようになる.以下この図を使って考える.

JMO2006 No.10_1

 正12面体の対称性より,アリが出発した方向と戻ってきた方向を,次のように書き加えて良い.

JMO2006 No.10_2

 このとき,アリが全頂点を1度ずつ通過する方法は,次の10通りある.

JMO2006 No.10_3 JMO2006 No.10_4 JMO2006 No.10_5 JMO2006 No.10_6 JMO2006 No.10_7 JMO2006 No.10_8 JMO2006 No.10_9 JMO2006 No.10_10 JMO2006 No.10_11 JMO2006 No.10_12

 入口と出口がどちらとどちらか,出発した方向と戻ってきた方向がどちらとどちらか,は,あわせて2*3=6通りある.
 よって,アリが全頂点を1度ずつ通過する方法は,あわせて60通り.

11

 答:π/4

 0≦x_1<x_2<...<x_n≦π/2
 をみたす実数x_1〜x_nを用いることにより,
 a_i=sin(x_i)(i=1, 2, ... , n)
 とすることが出来る.このとき,
 f(a_i,a_(i+1))
 =sin(x_i)sin(x_(i+1))(sin(x_(i+1))cos(x_i) - cos(x_(i+1))sin(x_i))
 =sin(x_i)sin(x_(i+1))sin(x_(i+1)-x_i) (加法公式)
 =(sin(x_i)(cos(x_i) - cos(2x_(i+1)-x_i)) / 2 (積和公式)
 =(sin(2x_i) - sin(2x_(i+1)) + sin(2x_(i+1)-2x_i)) /4
 よって,
 f(a_1,a_2) + ... + f(a_(n-1),a_n)
 =(sin(2x_2-2x_1) + sin(2x_3-2x_2) + ... + sin(2x_n-2x_(n-1)) / 4
 (sin(x))'' = -sin(x) < 0より,sin(x)は[0,π/2]で上に凸.よってJensenの不等式においてf(x)=sin(x),重みをすべて1/nとおくと,
 (sin(2x_2-2x_1) + sin(2x_3-2x_2) + ... + sin(2x_n-2x_(n-1)) / 4
 ≦n*sin((2x_n-2x_1)/n) / 4
 ≦n*sin(π/n) / 4
 さて,n*sin(π/n)<πであることを示そう.
 (x-sin(x))'=1-cos(x)>0が(0,π/2]で成り立つので,(0,π/2]でx-sin(x)は単調増加.これとn≧2より,π/n-sin(π/n)は単調減少となる.
 よって,n→∞とするとき,n*sin(π/n)→πであることを示せば良い.
 sin(x)をx=0の周りでTaylor展開すると,
 sin(x) = x - x^3 / 3! + x^5 / 5! - ...
 となる.これを用いれば,
 n*sin(π/n) = π - π^3 / (3! * n^2) + π^5/ (5! * n^4) - ... → π(n→∞)
 これよりn*sin(π/n)<π.また,幾らでもπに近づくことは今までの議論より明らかなので,c=π/4である.

12

 答:16796

 p_1=q_k=1かつ,i=1,2,3,...,k-1についてp_(i+1)*q_i - p_i*q_(i+1) = 1が成り立つ2k個の正整数の組(p_1, ..., p_k, q_1, ... , q_k)全体の集合をM_kとする.
 まず,以下のことを示す.

 (Lemma.)
 任意の(p_1, ..., p_k, q_1, ... , q_k)∈M_kと任意のi=1,2,3,...,k-1に対し,(p_1, ..., p_i, p_i+p_(i+1), p_(i+1), ..., p_k, q_1, ..., q_i, q_i+q_(i+1), q_(i+1), ..., q_k)∈M_(k+1)
 また,M_(k+1)の任意の元はこの方法でM_kから構成することが出来る.

 (Proof.)
 (p_1, ..., p_i, p_i+p_(i+1), p_(i+1), ..., p_k, q_1, ..., q_i, q_i+q_(i+1), q_(i+1), ..., q_k)∈M_(k+1)は計算すれば明らか.
 逆に,(p_1, ..., p_(k+1), q_1, ..., q_(k+1))∈M_(k+1)に対し,p_i+q_iが最大となるようなiを1つ取ってくる.このとき,
 p_i*q_(i-1) - p_(i-1)*q_i = 1
 なので,
 p_(i-1)*q_i ≡ -1 (mod p_i)
 p_i*q_(i-1) ≡ 1 (mod q_i)
 である.明らかに任意のkに対して(p_k,q_k)=1なので,それぞれ解はmod p_i, mod q_iで1個ずつある.それらをx,yとする(1≦x≦p_i, 1≦y≦q_iとしてよい).
 最大性より,p_(i-1)≦p_iかq_(i-1)≦q_iかの少なくとも片方が成立する.
 前者が成立したとすると,p_(i-1)=xである.このとき,q_(i-1) = y + k*q_iとすると,
 p_i*(y + k*q_i) - x*q_i = 1 ⇔ p_i*y + (p_i*k - x)*q_i = 1
 k≧1とすると,p_i*y = 1,(p_i*k - x)*q_i = 0しかありえないので,考えられる組合せはp_i=x=y=1, q_i=0となり,矛盾.よってk=0,すなわちq_(i-1) = y.
 後者が成立したとすると,q_(i-1)=yである.このとき,p_(i-1) = x + k*p_iとすると,
 p_i*y - (x + k*p_i)*q_i = 1 ⇔ p_i*(y - k*q_i) - x*q_i = 1
 k≧1とすると,p_i*(y - k*q_i) ≦ 0, x*q_i ≧ 0となり,矛盾.よってk=0,すなわちp_(i-1) = x.
 よって,どちらの場合にしろ,p_(i-1) = x, q_(i-1) = yが成立することがわかった.
 p_(i+1), q_(i+1)についても,まったく同様にして1≦p_(i+1)≦p_i,1≦q_(i+1)≦q_iであり,
 p_(i+1)*q_i ≡ 1 (mod p_i)
 p_i*q_(i-1) ≡ -1 (mod q_i)
 が言える.
 さて,
 (-p_(i-1))*q_i ≡ 1 (mod p_i)
 p_i*(-q_(i-1)) ≡ -1 (mod q_i)
 なので,
 p_(i+1) ≡ -p_(i-1) (mod p_i)
 q_(i+1) ≡ -q_(i-1) (mod q_i)
 である.これと,さっきまでの不等式評価により,
 p_(i+1) + p_(i-1) = p_i
 q_(i+1) + q_(i-1) = q_i
 を得る.これが示すべきことであった.■
 


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MATHIC(筑駒中高数学科学研究会)
Last Update - 06/01/09
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