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最終更新日: 2001年3月7日(水曜日)


公理は、数学するときの前提だ。数学は理屈だから、何を証明するにも別のことをもとにしなくてはならない。だから、最初に何か正しいと認めてやらないと何も始まらない。直感に頼ってもいいのだが、それでは何が正しいのかあいまいになる。あいまいなのは真理を追究する数学に似つかわしくないと感じたら、最初に認めることがら(命題)を書き出すしかない。こうして書いたものが公理である。認めた事柄を全部まとめて公理系という。

『幾何学原論』は、古代エジプトのアレクサンドリアで、ユークリッドという数学者が古代ギリシア語で書いた本だ。当時のアレクサンドリアはプトレマイオス一世の都で、ユークリッドも彼に数学を教えた。このとき王に「幾何学に王道なし」と言ったのが後世に伝えられている。

公理は、紀元前の数学書『幾何学原論』にもあった。今では数学の様々な分野に公理がつくられている。

人のつくった公理に飽きたら自分で公理をつくって自分の数学をつくってもいい。実際に幾何学原論とは違う公理をつくって「平行線の存在しない空間」を考えた人もいる。これまで人の考えなかったことを考える。発見である。

ただし自分で公理をつくるには条件がある。まず、公理をもとにして矛盾が出てこないこと。矛盾する二つの事柄を同時に認めると他のどんなことも証明できる(→矛盾)からだ。それから、無駄に公理をつくらないこと。他の公理から証明できることを公理として認めるのは矛盾は引き起こさないかも知れないが、悪いことだ。より少ない公理から多くのことを示すのも数学の価値だから。この二つの条件をみたした公理系は、間違っていないことになる(おもしろいかどうかは別)。

矛盾を引き起こさない公理系をつくる方法として、すでに存在するものについて正しいことをいくつか公理にする、という方法がある。『幾何学原論』の公理はすでに存在していた「直線」や「点」「平行」「交わる」といった概念について正しいことを書き出したものだ。でも数学だからといって抽象的概念にこだわる必要はない。現実世界のある部分について公理系を定めることは十分可能だと思う。


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